あの日、
たとえひと時でも
愛してしまった女性。


雨の中、
こらえ切れず
抱きしめてしまった女性。

彼女の
これからの人生や、
置かれてる立場や、
心情を思えば思うほど、
その抱擁をとき、
少しずつ
離れていくことが、
最大の愛情表現だと
気づかされた女性。


その女性、
美雨が・・?


人の一生は、
生まれたときから
シナリオが
決まっていると
誰かが言う。


誰が、美雨を、
美雨の人生を
26年で終わらせる
シナリオを書いたんだ?


この怒りと悲しみ、
誰にぶつければいいんだ?

この不幸な
事実を伝えてくれた
婚約者か?
僕が味方をした
婚約者か?


知らないふりも
できたのに、
一大決心をして
感謝の言葉さえくれた
婚約者に怒りを
ぶつける権利は
僕にあるのか?


僕は、
書置きを残し、
携帯を持って
家を飛び出した。


近くの公園に
まだ咲いているかな・・。

いや、咲いててほしい。


夏本番の日差しが
照りつける午後。
眩しく生き生きとした
夏の色に映るはずの
街の風景も、

猛毒を
振りまかれた後の
ような
よどんだ色にしか
見えなかった・・。