「家庭でも無気力なら、会社でも同じことだ。

「おいおい、最近とくにお疲れ〜って顔してんな〜」
昼休み、社員食堂でいつものとおり最も安い定食を食べ終わるころ、同僚の上田が僕の隣に座りながら
言った。

「あ、ああ。いろいろ・・とな。」やはり無機質な答えしか僕にはできない。


「いろいろ・・ね。あ、そうだ、おまえなんか悩んでるならいまどきの悩み事は友人や上司に相談する
もんじゃないんだぜ?知ってるか?」

「なんだ、それ。じゃ〜誰に相談すればいいんだ?」

まさか家族とか言うなよな・・。


見知らぬ人だよ。ネット上のさ」

「どういうことだ?」

上田が携帯を取り出し、どこかにアクセスしようとしている。

僕も携帯でニュースや音楽関係のホームページをたまに見ることはあっても、それ以上のことはなかっ
た。
時間もないし、面倒なことだ。上田の言ってるのは、まさか出会い系とかじゃないよな・・?

「あ、これこれ。SNS.ソーシャルネットワークサービスだ」

上田が画面を僕に見せてくれた。

「安心しろよ。エロサイトじゃないさ。自分のページを作って、まあ自己紹介とか書き込んで、あとは
検索するなりなんなりですぐ見知らぬ人と仲良くなれる。同じ境遇を持った女なんかは知り合いやすい
ぜ。」

「そう簡単に人間信頼しあえるもんなのか?」

信頼関係を失いつつある僕には、信じ難いことだった。