美雨がもう別の世界に
行ってしまった今
何が残ったかといえば
諭したつもりの僕が
逆に美雨から教わった
真実の愛だったのかもしれない

ゆらゆらと揺れる
紫陽花の生き生きとした姿が
それを訴えているような気がする

哀しみにくれてばかりでは
いけない哀しんでも哀しんでも
僕は美雨を生き返らせて
婚約者とのこれからの長い人生を
取り戻してあげることなんかできない

僕が雨の季節に
舞い降りてきた美雨から
教わった愛を
無償の愛を与えるべき人に
与えなくてはならないんだ

それが美雨の
たった一つの願い
そしてひとかけらの
僕への愛情だったんだ

きっと美雨が最期に
聞いたであろうあの曲が
僕の心に浮かんできた