「そこがネットの魔力かな。ほら、よくトラブルは面と向かってより電話のほうが解決することだって
あるだろ?あれと同じだ。意思の疎通がしやすいんだよ。結局ほぼ同じ方向を見てるからな。ネットの
世界の人間は」


「同じ方向?」

「そう。なにか私生活でうまくかみあってないとか。悩みを一人で抱えてるとか。まあ、たまにアレだ
けが目的ってのもいるがな。わかるだろ?アレ」

他の社員もいるから、ストレートには表現できないのは僕にもわかった。

上田は僕の携帯にそのサイトのURLをメールで送ってくれた。

「まあ、いやならすぐやめればいいし。くだらん相手しかいなかったら好きなときにシカトできるし。
おまえの自由だ。それも利点のひとつだよ。俺なんかに相談するより、深い答えしてくれるぜ、いいの
に当たればな」

「そんなもんかな・・」

にわかには信じられなかった。

「あとな、寂しさを感じてる者同士、肩を寄せ合うなんてラブストーリーさえあるらしい。俺には向い
てね〜けどな」

「ところで上田、おまえはなにが目的なんだよ」

そう、やけに事情通でおおまかな性格の上田は、こんな細かいことをするとは思えなかった。

「アレに決まってんだろ。ネットナンパ。あははは」

その先はあまり知りたくなかった。

こいつの様子からすると、かなり楽しんできているようだ。

人の自慢話し聞いてるほど暇じゃない。

一応そのURLをブックマークして携帯を閉じた。