私は朝ごはんを食べ終えると、自分の部屋へ戻った。
壁にかかった、紺色の制服を見ると一気にテンションが下がる。
中学の時と何も変わらない、セーラー服。
私は仕方なく、制服に袖を通した。
かすかに、新品のパリッとした香りがした。

私はふと思い出して、机の引き出しを開けた。
そして奥のほうに手をつっこんで、ガサガサと探った。
奥から銀色の携帯電話を取り出して、電源をつけてみた。
・・・ピロリンッ
大量の着信・メールの数々。
私は受験に失敗した日から、誰とも連絡を取る気になれず、机の奥に封印していた。
メールボックスを開くと、愛花の名前がたくさん出てきた。
・・・愛花、ごめんね。
私は全部のメールを見ずに、すべて削除した。
私は本当に、弱い人間だ。未だに受験の傷が癒えていない。

階段を下りて、靴を履いて外に出た。
すがすがしい、春の香りがした。
青い空に、白い雲。入学式なんだ、って事を思い出させられる。

バスに乗って、椅子に座った。
今から行く高校。
ダサい制服。
友達もいないし。
憂鬱な気分で、窓の外の風景を見ていた。

・・・トントンッ
ふいに誰かに肩を叩かれた。
寝てしまったみたい・・・。
うっすらと目を開けると、整った顔立ちをした男の子が私を見つめていた。
私が目を細めて、男の子を見ると、
男の子は、ポケットからデジカメを取り出した。
デジカメ・・・?
私が、さっきよりもっと目を細めると、男の子は、あたしの方を向いて、カメラのシャッターを押した。
強いシャッターに、思わず目を閉じた。

「フッ・・・変な顔。」

な・・・・な・・・・何ぃぃぃ‼
私は驚いて目を思いっきり見開いた。

「なッ・・・何よッ‼今の、消してよッ‼」
「はぁ?嫌だよ。俺が撮ったんだもん。」
「ちょっと、嫌だぁ~・・・あッ‼その写真、ネットとかで広める気でしょ‼」
「プッ・・・こんなブサイクな写真、広めてもどーしよーもねーだろ。」

私は男の子とギャーギャー言い争いをしていた。
バスの中の人が、チラチラこっちを見てる。
でもそんな事、気にしてられない。
だって、あんなブサイクな写真・・・嫌ぁぁぁーー‼