街灯と街灯の丁度薄暗い場所に足を降ろした。
彼は全身黒く、また別のダウンジャケットを羽織っていた。

「君の夢を知ってるんだ」


一瞬間を置いて空気を肺に入れ込むように囁いた。それは酷く優しく。

それは酷くリアルで彼は淡々とあたしの夢を語った。

「君はキャンディ-が食べたいんだろなら従って」

それは。

「は………い……」

余りにも残酷だった。

あたしが育ってきた環境も。

つくりあげてきた現実も全て彼が鍵を握っているような。

そんな感覚に陥る。


何故ならそれはあたしにとって。
最高の言葉であり単語だから。
あたしがしたいこととしたくないことの順序は簡単に変わる。

彼の一言は今では甘い囁きに冴え聞こえるようになってしまった。



「じゃ、頼んだよ」





彼に返事をしようと唇を動かせば彼はもう既にその場には居なかった。
背後で車が通り過ぎる音が聞こえ、あたしは風に仰ぐ髪を梳かし頷いた。

あたしはこれから先生の部屋に侵入する。