階段を見上げ、彼は携帯を掲げ画面を見せた。

あたしはなんだろうと画面をみるために顔を近付けて硬直した。



「あいつン家だよ。だから君は理解するよね?」

「あっ」


喉がからっからに渇いてあたしはなにもいえなかった。

声をだしたつもりでも彼は「黙ってるね」「そうとう驚いてる」「意外だな」と区切って間をとっていいながら笑っていた。

彼の瞳が輝いているのかたまたまなのかあたしに強い視線の熱が伝わり身震いした。



恐怖。



「…ッ」

彼はいつの間にあたしの背後に回ったのだろう。

「ほら目立つからあれに乗ろうね?いい子だから」

あたしをみつめ彼はいかにも怪しい誘い言葉を口にした。