「離さないでってなに」
「…ッ」


「まっいいけど。離すつもりないし………あ…いまの」


“忘れて?”──

忘れることなんてできないよ。

陸っ陸~。

 ぎゅっ

「なんだかさっぱりなんですけど」

敬語で聞いてくる陸の肩にあたしは顔を当てて、首を左右に揺らした。

涙はさっきよりかは収まってきたけれど。
まだ。
涙は溢れる。止まることを知らない感じで涙が陸の彼の黒いパ-カ-を濡らす。

染み込んで、陸がたまに「冷たいっ」と、呟くごとに涙が溢れる。