「イジメられてんの?」


「………」


蹴られた脇腹を押さえて屈み込んでいた僕は、近付いてきた人影に気付かなかった。
顔を上げたそこにあったのは、髪をショートカットにした女子生徒。どこかで見たことあるな、と思ったら。


「あ、あんた登くんだ。覚えてる?私、歌夜の友達」


そう言ってニコッと笑った彼女の笑顔はあまりに爽やかで、眩しいくらいだった。


「覚えてますよ、えっと……羽田葵さん、でしたっけ?」


僕はズキズキ痛む身体を無理矢理起こそうとした。けどやっぱりまだ無理だったみたいで、思わずうめき声を出して再びしゃがみ込んでしまう。


「大丈夫か?無理しなくていいから座ってなよ」


そう言った葵さんは、僕の隣に同じようにしゃがみ込んで背中に触れた。サバサバした口調とは対照的に、その手のひらは優しい。


「すみません……」


「いいよー。どうせもう部活も終わったとこだし。一人でこんなとこいたら心細いっしょ?」


そう言いながら背中をさすってくれてる彼女の手の感触に、僕の全神経が集中してた。