「あ……?紅志?」

ぼんやりした表情のまま歌夜が目を瞬かせ、真っ赤な顔の紅志を見上げた。
自分の格好には全く気付いていないようで。

「あ、ああ。お、俺今からバイトだから、鍵、た、頼む」

どもる紅志に、首を傾げながら歌夜はこくんと頷いた。

「りょうかーい!いってらっしゃーい!」

にっこり笑顔を作った歌夜、あろうことか上体を起こしてしまいました!!

──ぬおーーーっっ!!

悶絶です!!紅志、憤死寸前!!

しかし、さっすが日頃から鍛えていらっしゃる。
なんとか平静を保ったままで、彼は笑顔を作ります。

「い、行って来る」

ひらひらと手を振り、玄関へ向かおうとしたその時。

「あ!ちょっと待って紅志!!」

まだ何か?!

振り返れば、歌夜がベッドの上から紅志を手招いてます。