「お!篠塚、今日は早いのな」

……またコイツかよ。

チッ、と小さな舌打ちをして、篠塚莱(シノヅカライ)はチラリと斜め後ろを振り返る。そこにはニコニコ爽やかな笑みを浮かべた2つ年上の先輩。

高城諒介(タキリョウスケ)。それが彼の名前だった。

「何すか、先輩。俺急いでんすよ」

「いいじゃん、ちょっとだけだからさぁ」

そう言ってこの前は15分も捕まったんだけど、なんてことは言わない。一応上級生だし。

はぁ、と諦めの溜め息を吐き出した莱は、緩慢な動作で自分の靴を下駄箱に入れ、上履きに足を引っ掛けた。

「で?今日はどこで?」

その言葉を待っていた、と言わんばかりの満足顔で、諒介は口を開いた。

「ちょっとそこまで」

人差し指を上に向け、にっこり笑った。