「あん?」
「べっつにぃ~」
煙草をくわえ、火を点けて俺に疑問の眼差しを向けたヤツには答えず、俺も自分の煙草に手を伸ばす。
「まだ煙草やめねぇの?」
「えぇ~?だって好きだもん、この味」
自分の体を少しずつ蝕んでるようで好きなんだ……、なんてことは言ってやらない。
怒るだろうしさ。
「ほどほどにしとけよ、その声はオマエにしか出せねぇんだから」
「おぉ~!嬉しいこと言ってくれるね~!俺涙が出ちゃう!」
「バーカ、オマエの声が潰れたら俺が困るんだよ」
くす、と笑って目を細める俺のギタリストは、照れた様子でそっぽを向いた。
その横顔を見ながら俺は思う。
―――俺がこの声を潰すとしたら、それはオマエの音の為だ。
それまでは……この声が枯れるまでは……隣で弾いててくれよな……。
な~んて、ぜってぇ声に出しては言ってやんねぇけど!
「なに、気持ち悪いよオマエ。笑うな」
「うるさーい!」