ユキさんは何かを言おうと私の方を見、言葉を止めた。言うか言わないかを迷っているみたいだった。 ユキさんの視線が、一瞬、宙をさまよった。 「…なんでもない。ほら、遅刻するぞ」 「え、あ、…いってきます」 いってらっしゃい、というユキさんの言葉を背に、私はユキさんの家を飛び出した。