「…じゃあ、夕食までには帰ってくるから」 「はい、いってらっしゃい」 「いってきます」 何度言っても、ユキさんに『いってらっしゃい』というのは照れる。『いってきます』というのも少し照れくさいのが事実。 それ以上に照れるのが、『いってらっしゃい』なんだけど。 ぱたん、と閉まったドアを見つめたまま、私はそこに立ち尽くしていた。