「おい神崎……」

「何ですか?」



三十代の正社員である男、山下が話しかけてきた。


普段は俺のことが嫌いなのか何なのか滅多に話しかけてこない。


まぁ俺も他人には必要最低限のことでしか話しかけたりしないからいいけど。



「昨日麻美ちゃんに聞いたよ……」



こいつもか。




「俺が口出しするようなことじゃないとはわかってるんだけどさ……。

ちょっと言わせてくれな?

おまえ、確かにいい顔だけどよ……だからって女の子を泣かせるのはよくないと思う」


「別に俺……」


「麻美ちゃんはたぶん、色々デリケートなんだと思う」



自分がふられた話を広めるやつのどこがデリケートなんだ。



「おまえのその……軽い感じというか、遊びで麻美ちゃんを傷付けないでくれよ。
無理してる麻美ちゃんを見るのは辛いからさ……」




皆一体、麻美さんから何を聞いているんだ?