「神崎くんてさー」
俺が在庫確認をしていると、麻美(あさみ)さんが話しかけてきた。
麻美さんは俺と同じ歳くらいだったと思う。
俺より前からここでバイトをしていて、最初の頃はよく仕事について教えてくれた。
栗色のショートカットに薄い化粧。
いつでもシャンプーの香りのする麻美さんはここで働いてる皆の癒し。
「彼女とかいるの?」
だけど、俺はこの人が苦手だ。
親切にしてくれる裏には、下心が隠れてるから。
「彼女ですか?」
「うん」
俺は少し考えるふりをする。
「いませんよ」
「ふーん、じゃあ好きな人は?」
「います」
「そっかぁ、残念……」