「はやく……」


「ん?」



俺が靴を履いてドアに手をかけると、ウミちゃんは少し頬を染めて、スマイリーに顔をうずめた。



「はやく帰ってきて……」


「……」



思わずにやけそうになった。



「どうして?」



俺はウミちゃんに意地悪になってしまう。



「……怖いんだもん」



ウミちゃんがあんまりにも可愛いから。



「昨日の映画……怖かったんだもん……」



あー……。

俺なんか忘れてたよ。


そう思うのと同時に、ウミちゃんには悪いけど、あの映画を見せておいて本当に良かった、と思った。



「スマイリーがいるじゃん」


「……しゅ……瞬くんがいい」


「わかった」




ぎゅってウミちゃんを抱き締める。

ウミちゃんと俺の間でスマイリーが苦しそうに唸った。



「早く帰ってきてね!」


「うん」


「行ってらっしゃぁい」



さっきとはうってかわってぱあっと明るい笑顔で俺に手を振るウミちゃん。



やっぱりウミちゃんはとっても可愛い。

ぶりっこじゃなくて素直に可愛いウミちゃんが大好き。


でも、俺のためにぶりっこしてくれるならそれもいいな……。



そんな少し気持ち悪いことを考えながらバイト先に急いだ。