「……あ、うん」
「この子凄くいい子ですねっ」
無邪気に笑う女の子。
立ち上がって俺に近づいてくる。
短いワンピースから細い脚が見えた。
「なんて名前なんですか?」
人懐こい笑顔だ。
こどもって可愛いんだな。
「……名前?」
「うんっ、あの子の名前」
「……」
俺が黙ってるのを見て女の子は不安そうな表情になる。
「あ……、名前ないんだ」
「……へ? 名前がないのっ?!」
今度はびっくりして目を見開く。
ころころ変わる表情が可愛らしい。
「お兄さん、名前つけてあげなきゃ可哀想だよ……」
悲しそうにそう言う女の子を見て俺までなんだか悲しくなってきた。
犬は欠伸をしてる。
「そうだね……」
名前か……。
んーと首を捻って考えてみるけど、
ポチとかタマとかしか思い浮かばない。
……ポチでいいか。
「ポチ」
そう呟くと女の子は聞き返す。
「ポチ?」
「うん」
「えーっ、なんか普通すぎるよ!」
いいじゃん、普通で。