ピピピ



携帯が鳴った。

涼太からだった。



「もしもし」


「やっぱりウミちゃん帰さないつもり?」


「当たり前」



そう言いながら笑ってみせると、涼太は大きくため息をついた。




「本当に明日通報するからな?」


「うん」


「おまえのためを思ってなんだからなっ」


「わかってるよ」


「自分で行くのが一番なんだぞっ」


「それは無理」


「……」


「……」



少しの沈黙。



「涼ちゃん?」


俺が電話してると気づいて、ウミちゃんがそう聞いてきた。


こくんと頷くと、かわって! と走りよってきた。


犬みたいだ。




「ウミちゃんにかわるね」


「え?」



ウミちゃんに携帯を手渡す。



「もしもし涼ちゃん?」



俺には涼太の声は聞こえない。