◇ ◇
真っ青な空。
雲は一つもなく、まさに快晴である。
しかし、それは天気の話であって、自分の中の気持ちではない。
「…………」
押し黙ったまま、踏み均され、固くなった土の道を歩く。
身長は低い。白銀の髪を後ろで縛り、ボロボロな旅衣を羽織っている。手には布に巻かれた長い棒を持ち、それを肩にかけている。
端から見れば、ただの旅人に見えるが、少年にはヒトには無い、違う箇所がある。顔の横から申し訳程度に飛び出し、そして申し訳程度に尖っている耳。
人間ではなく、エルフ。それも、彼はクォーターエルフである。
「……むむ」
ここまで来る道中、長く思考していた覚えはないが、しかし少し前に奇妙な感覚が自分を襲った。
まずは疑問。
自分は誰なのか。
答えは簡単に出た。
名前はジーユ。クォーターエルフで、今は旅の途中。だけども、頭のどこかで自分はアオツキジユウだと主張している。
次に、ここはどこか。
ここは王国の支配の影響が少ない、小さな村や集落が集まっている場所。
完全に支配から抜けているわけではないが、街よりは遥かに安全な場所だ。
しかし、違う。世界を支配できるようなそんな大きな勢力はなく、自分はコウコウセイだったはず。そんな思考が生まれてきた。
そして、最後に。
先から出てくる奇妙な思考と、それに準ずる記憶たち。
自分の物でないようでいて、だけども否定しきれない。その否定しきれない何かが自分の記憶であることを肯定しているようだ。また、それこそが真実のように思えて仕方がない。
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