「コウキさ〜、オレやっぱどっかで見たことあるんだよね」


また、この話か。

オレに会って仲良くなってからフミは何回も


オレをどっかで見たことがある気がする

どっかで見たことがある気がする

と言う

知らねーよ。


「またその話かよ。お前だって長野のヤツだろ、会ったことあるわけ無いじゃん」

オレはいい加減しつこいといった口調で返した。


コイツは長野のヤツで、今は上京して一人暮らしをしている。

確かに自然の中で育ちました、という感じの素朴さが残ってる。

そして、純粋そうで女子からよく、かわいいと言われている。

でも生まれはこっちで、住んでた時期もあるらしい。

その時のことは話してくれないけど・・・

いつも、なんか話すことを拒否してるような感じだ。


「・・・うん、そっか」

フミがなにか引っかかっているような感じで返してきた。

まぁ、イイや。 この話になるとどうせいつもこんなだし。


「なぁ、それより明日提出のレポートやった」

今度はオレの方から話題を提示した。

「あ〜、やろうとして寝ちゃった」

返してきた。


それから、バイトの話や、学校のヤツの話とか色々した。

空が薄暗くなるにつれ客が増えていき、だんだん居づらくなってきた。

そしてそこにとっても賑やかな高校生グループがやって来たため店を出ることにした。

本当にうるさかった、大音量の音声装置が店の中に入って来たようだった。

くだらない話をしながら、駅までの道を一緒に歩いていった。

この場所がいわゆるオフィス街だからだろうか、スーツを着てスタスタと歩く何人もの人々に越されていった。

きっと彼らからしたら、オレらは急ぎを妨げる障害でしかないのだろう。

ヒマで脳天気な学生とも思ってるだろう。

まあ決して否定はできないけどね・・・。

駅に着いた、オレはJR、フミは地下鉄なので、別れのあいさつをしてそれぞれのホームへと向かった。

ホームに到着する電車が運んできた風が妙に心地よかった。