予定していた時間よりも早く病院に着いた私は、


中庭を散歩することにした。


川崎先生の声を聞いたら、
なんだか安心して
不安な気持ちが少し消えた。


バレていたのかも、
本当はバレていたのかもしれない。


だけど先生は言わなかった。
心配して、くれた。


人間なんて簡単に信用しちゃいけないけど、
なぜか先生は信じたくなる。


何でだろうね、先生。


あなたは私に、溶け込むようにすんなりと入ってくる。



突然、私の足元にコロコロと野球ボールが転がってきた。


コツン、とブーツの爪先に当たり少しばかり跳ねる。


「すみませ〜ん!」


可愛らしい声がして、
たたたっと走り寄ってくる小さな男の子。


「そのボール、取ってくださ〜い。」


ああ、この子のか。


しゃがみ込んで野球ボールを掴む。
独特の、匂い。


懐かしさが込み上げた。