だから、
だから先生だけには、
本当の番号を教えたんだよ…?
「あ、もしもし。夜分遅くにすみません。川崎隆太です。」
なんて堅苦しい話し方。
「…川崎先生。話し方、堅すぎ。」
「えっ、ああ、そうですね。」
「今も、堅い。」
「すみません…て、これも堅いか…」
困ってる。
こんな人、初めて。
なんだか微笑ましくて、笑みが漏れた。
「…実は……、たぶん間違いだと、思うんですが……今日の夜、外出されてましたか?」
「…え?」
「て、いきなり変ですよね。すみません。
ただ…似たような人を見つけた気がして……」
「……っ……」
「なんだか、不安になったんです。わからないけれど……
大野さん…何か、隠していることがありませんか?
困っていることとか……。
て、そんなの話したくないですよね。ごめんなさ……
「先生っ……。」
「…はい…?」
「…会いたいっ……」
『会いたいよ、先生。』
そう自然に、呟いてた。