抱き締められるなんて、
変な話、慣れている。


なのに、なんだかすごく新鮮で、心が安らぐ。


それは、先生がどこかお父さんに似ているから?


それとも……


ううん、違う。
そんなこと、あるわけない。



私は、川崎先生でさえも
騙しているんだから。



ねぇ、先生。
これ以上私には近づいちゃダメだよ。



あなたみたいな人には、
私を知ってほしくない。





「もう…大丈夫です。」


自ら先生の温もりから逃れ、
鼻をすすった。


頬についた涙の跡を拭い、
笑顔で言う。


「心配かけて、ごめんなさい。」


そんな悲しそうな顔、しないで。ほら、また笑ってよ、先生。



「今日は…帰ります。」



私は……優しくされるのに、
慣れてないから。


人への優しさも、よくわからない。


だけど、先生へのこの気持ちが、優しさであってほしい。



本当に、そう思った。