親父は頑なに口を結び、
動かない。目を合わせない。


「…なぁ、親父!」


「そろそろ、出ようか。」


一方的に言い捨てられ、
言葉を失う。


親父は席をたち、
机の上の伝票を持って姿を消した。


何も…言えなかった。
これじゃあ…これじゃあこれから“起こる事態”を食い止められない。


そう考えるよりも先に、
行動をしていた。



店を出る、
慌てて出たせいで人にぶつかった。

「あっ、すみません。」



どキツい香水の匂いがした。
目が合う。



俺よりも背の高い
綺麗な顔立ちをした男性だった。

この男性とまた別の形で会うことになるとは、
俺はまだ知らない。



「待てよ!親父!」


息が上がる、
タクシーに乗り込む親父を捕まえた。