「久しぶりだな。2人で食事なんて。」
「別に、こんな高い店にしなくても良かったのに。」
俺は今、親父が予約した
老舗の日本料理店にいる。
「いいじゃないか。なかなか来れないんだから。な?」
次々と運び込まれる色とりどりの食事たちが、
目の前に広がる。
それを嬉しそうに見つめ、
「たくさん食べろよ。」と笑う親父は、“院長”ではなく、ただの俺の“父親”だった。
だから、
なかなか言いだせなかった。
この雰囲気を崩すのは、
かなりの緊張と、タイミングが必要で
俺には、それがどうしても出来なかった。
料理も終盤。
そんな時、
「…あのな、隆太。」
口を開いたのは
親父だった。