『さっきから視線を感じる……誰だろう?私をジッとみている奴がいる』


社運をかけた会議で、私は自分のいる企画部のプレゼンを任されていた。


一通り説明を終え、質疑応答に入ろうかというその時に鋭い視線を感じて手に嫌な汗の感覚を覚えたのだ。


「佐倉くん、ちょっと聞きたいだけど……」


「あ、は、はい」


突然の呼び掛けにたじろいだ私の目線には、かっぷくのよい重役クラス永山専務がいた。


専務の質問に答えている間にも強い視線を感じていた。


まるで蛇のように絡み付くそのパワーに砕けそうになりながらも、私は凛とした態度を貫こうとした。



しかしその視線は熱く、まるで着ている服を一枚一枚はがされている……そんな感覚を覚えずにはいられなかった。


男たちの前であられもない姿になっていく自分を想像するだけで身体の中心が熱くなる。


『どこで見ているの?』

自分の出番が終り、席に座ると周りに気がつかれない程度に辺りを見渡す。


すると、異様なほどにギラついた目で見ている男が確認できた。


その男は会議室では初めてみる顔で、何故か社長の隣りに存在感大きく座っていたのである。


逃れられない視線から身体はホテり、その場にいられないほどだった。


しかし、その隣りに座る社長からは温い空気が発せられている。


『俺の息子だ。悪く思わんでくれ……』


社長は自分の愛人である千涼にそうアイコンタクトを送っていたのだが伝わるハズもない。


『………社長』


千涼は哀願の思いで社長を見つめたが、息子の気持ちの強さからそれが伝わることがなかった。


その会議のあとから千涼の身辺は慌ただしくなっていった。


身に覚えのないメールや人気のない場所でのへんな錯覚。


大好きな社長とも会えない日が続いた。



会議から一週間が過ぎ、あの男が社長の一人息子で御曹司だと知る事になった。


それから更に千涼の苦悩の日々は続く………



=fin=


※~想い~と連動していますのでこれも続きません。あとは前後はご想像くださいませ。