『あ゙~、うぜぇ~』


授業中、痛いくらい感じる不快感。


『やっぱ、俺ってば嫌われてるよな…』


俺は、右手で無造作に頭をガシガシ掻いた。


でかい図体が、小さな彼女の視界を遮っていることは確実な事実だ。


この四月に、同じクラスになった女の子。


色白で、スカートなんかも規定通りで、いつも石鹸の香りがする。


まさに、清純派。


がさつな俺なんか、相手にされねーだろうな。


だから、顔を見ると悪態を付きたくなる。


センコーがプリントを後ろへ回せとか言うと、心臓がバクバクする。


指先が触れると、彼女はいつも急いで手を引っ込める。


極め付けは女友達。


俺は、硬派なチャラ男だから、女友達は沢山いる。


休み時間も、よく会いに来る。


すると、彼女の顔が一気に興ざめだ。


呆れられてんだな。



俺の『好き』は、届くことはないけど、時たま触れるこの指先は、俺の宝なんだ。


でも、それは秘密。



これ以上、彼女を困らせる訳にはいかない。



背中に感じる、不快感がある内は、彼女が俺を見ている証拠だ。


これからも、偶然を装って彼女の指に触れる。



それくらい許してくれ……



=fin=