19時。
チャイムがなる。
暗いカオをした亜里沙をリビングのソファーに座らせ、アップパイとジンジャークッキーに亜里沙の好きなダーリンのストレート。
僕はオレンジペコにラム酒を垂らし、亜里沙の前に座り込む。
「夜月は相変わらずお菓子作りがうまいね」
亜里沙は焼きたてのアップパイに手を伸ばす。
もくもくとそれを平らげ、ため息を一つ。
僕は今度は亜里沙にオレンジペコを勧めた。
こくり、と音をたて亜里沙はうつむいた。
「どうしてなにも聞かないの」
ポツリと亜里沙がいう。
「話したければはなせよ」

「学校とは別人ね」
亜里沙はやっとカップから顔をあげた。
品行方正な僕は学校では多少はめを外した格好をするがそれは皆と同じ擬態だ。
家ではパンクロリと呼ばれる格好をしている。
長い黒髪はピンでショートにし,黒のコットンサテンのシャツにワインレッドのリボンタイ、細身のスキニーに赤いチェックのオーバースカート。いくつものシルバーのリング。7個のピアス。
このまま外にでても誰が優等生の僕と気づくだろう。

「で、どうした」
僕の冷静な声に亜里沙はポツリポツリと話し出した。