『放課後一緒にかえりませんかぁ』

…部活はどうした!?
貴様、苦手な現国の時間だろう。

仕方ない。
こんな所でも優等生な僕は
『わかったよけど部活大丈夫生徒会も今日は美波の為にサボるから(笑)』


絡まれるのは面倒だかこれも僕の擬態だ。
後輩を心配しつつ、自分の仕事(生徒会)はサボる。
というか、あらかたの仕事は片付けてある。

恩は着せておくものだ。

ふっと薄く嘲笑み、僕はまた窓から空をみた。

夏も近い空は、青いペンキでもぶちまけたような、のっぺりした空だった。

世界はジオラマか映画のセットみたいに、味気ないんだ…

だから僕は…


『キーンコーンカーンコーン』

就業のベルは伝統をかさにきた、この学校の様に時代遅れだ。

『起立、礼!ありがとうございました。』

ありがとうございましたーと、皆が投げやりに言う。
これから放課後だ。
化粧品を取り出し、メイクはじめるやつ。
他校の彼氏に電話しだすやつ。
部活に急ぐやつ。
メールしはじめるやつ。
バイトに遅れるとあわてて走り去るやつ。

僕はゆっくり教科書等をスクールバッグに入れ、席を立つ。

「いいんちょー帰るのぉ」

化粧品を机にばらまいてるやつが言う。
ナンパ待ちに行くか合コンか。
こいつらの行動パターンは猿以下だ。

なんて内心をおくびにも出さず、僕は微笑んで返事を返す。

「図書館だよ。生徒会室の資料だけだと足りないし」

「もうすぐだもんね!」

これは化粧品ズBだ。

「楽しみにしててね」

じゃーねぇ、と男相手に出すような甘ったるい声で手を振るやつらに、僕は擬態の微笑みと会釈で廊下へ出た。

後輩との落ち合い場所はいつも図書館だ。

大声も出せず、迫られもしない。


「めんどくせ…」

誰にも聞かれないよう小声で呟き、僕は廊下を歩きだした。