俺は、本名の勇を平仮名にし、ハンドルネームは「いさむ」と決めた。

『初めまして、いさむ、と申します。ナナコさん、今まで大変辛い思いをしてきたのですね。僕で良ければお話ししませんか』

 すると、返事は五分もしないうちに、すぐ返ってきた。

『いさむさん、書き込みありがとう。さっそくですが質問ね! いさむさんは、何歳? 彼女いるの? 友達はいる?』

 何だこいつ。
 普通、掲示板でこんなに踏み込んでいきなり訊くか?

 俺は首を傾げながらも書き込みをした。

『答え、書きますね。僕は四十歳で、もうおじさんです。彼女はいませんし、友達もいませんよ。最近寒くなりましたねお互い、風邪には気をつけましょう』

 俺は、上手くいってないといっても彼女はいるし、友達もいる。書き込みで嘘をついたのは、もし俺に彼女や友達がいることを云えば、ナナコは返事に困ると思ったからだ。トピックに書いてある通り、ナナコは彼氏や友達もいないのだし。同じ境遇だと思われた方が、話しやすいだろう。

 それから毎日、ナナコとのやり取りをするようになったのだが、ナナコは、日に日に本性を現したのである。