すると二階から笑い声が聞こえ、見上げると、重子が包丁を持ったまま笑っていた。

 俺は一階の重子と交互に見たが、間違いなく重子が二人居る。

 すると二階の重子が一階の重子に声をかけた。


「重子、こいつはダメだよ。今言った事が本性だろうから」


 二階の重子にそう云われ、一階の重子は、太い声で太い身体を揺らし、泣き出した。

 俺は何がなんだか分からなくなっていると、二階の重子が降りてきたのである。その後に続き、何と死んだはずの重美も降りてきた。
 俺は益々訳が分からない。

 二階の重子と重美は、一階の重子を慰めると、二階の重子が太い声で俺に説明した。


「私は重子じゃなく重代(しげよ)。あんたが重子に相応しいか試したんだよ。私達は三つ子なのさ」


「三つ子? 重美さんだけ似てない三つ子……?」


 すると重代は汚い顔を更に醜く、口の端を持ち上げ下品な笑い声をあげた。


「あんたもバカだねぇ。私達はこうやって男を見極める為に、重美だけ整形して、定期的に脂肪吸引してるのさ。重美が買い物に行ってる間は私が監視カメラで、あんたの重子に対する態度も観察させてもらったよ。あんたで四人目だ。他のやつも、整形した重美目当てで、重子と付き合っててさ〜あんたも失格だよ。帰りな」


 重代は貫禄たっぷりにそう告げた。

 俺は結局、のこのこ自宅に帰って行ったが、それ以来女恐怖症である。