重子の家は古い一軒家で、インターフォンを鳴らすと、ドタドタと大きい足音が聞こえ、ドアが開いた瞬間、豚野郎が細い目を更に細め汚い笑顔で立っていた。


「いらっしゃ〜い。待ってたわよ豪(ごう)君。さぁ入って〜」


 そう云われ、太い腕に掴まれた俺は、半ば強引に家へ引きずり込まれた。

 まず応接間に通され、ちゃぶ台の前に座ると、ちゃぶ台を挟んだ俺の目の前に豚野郎がドカドカと陣取った。
 しかし、丁度お昼の時間でもある事から、台所から重美が料理を運んできてくれた。


「いらっしゃい豪君。今日はゆっくりしていって下さいね」


「はい。あっ、美味しそうな料理ですね。全部重美さんが作ったんですか?」


「ええ。美味しいといいんですけど」


 重美は上品に微笑んだ。彼女に見惚れている俺に太い声の重子が話しかけてきて気分が悪くなった。


「早く食べようよ〜。重美は料理だけが取柄の女なのよね〜」


 何言ってんだ豚野郎め。お前は何も取柄がない分際で。
 俺は心の中で悪態をついた。

 そして二人と一匹は食卓を囲み、俺は重美ばかり見ていた。時折目が合うと頬を赤らめる彼女は本当に美しい。

 食後は談笑していたが、夕方になると重美が買い物に行ってしまい、俺と重子だけになった。その途端、俺はテレビを見て黙った。