エリーゼの後ろ姿を見送りながらアクトは微笑んでいた。


「殿下。」

皇太子の動きが止まる。

「ザグか…どうした。」


突然現れたフロックコート調の、濃紺の礼服に身を包み 髪をオールバックにした少し年配の黒髪の男は、挨拶をする手間を省き頭を垂れる。


「殿下のご推察通り 事は進んでいる様です。」

アクトは腕を組み、少し悩んでいたが…

「引き続き頼む。」

そう一言言い、

それを聞いたザグと呼ばれた男は再び 煙の様に消えていってしまった。


太陽は地を照らし、既に真上へと差し掛かり始めている──。