不安気に見つめるエリーゼに、フェイの顔が少し緩んだ。


「これが私の現実です。幸せになるためには、忘れてしまう事も、時には必要ですよ 姫君。」



う゛っ


とエリーゼの足が一瞬止まった。



が、聞いたことなど忘れた!



と、また歩き出した。


認めてしまったら、あの男がいい人間だと思ってしまうかもしれない…。


[だんっっじて、あり得ない!]







廊下を抜けた先には、重く冷たい扉。


エリーゼとフェイを外へ誘おうと

音を立て開く──



外では、寒空の下


霧のような雨がシトシトと降り出しいて


世界を白く染めていた。