「母に相談してみます。また来ますね。ピアノ、ありがとうございました。」

軽い笑顔を浮かべ、礼をして優里は音楽室を後にした。

廊下を歩いていて見える中庭から、大会が近いのかジャージではなくユニフォームを来たテニス部員の声が聞こえる。

全体の雰囲気はとても活気付いていて、一人一人の真剣な顔は輝く程に眩しい。

今の優里にその光景は酷く羨ましく映った。

それを後にし、昇降口を出ると真っ先に太陽の光が目に飛び込んできた。

セピア色に包まれた景色は、既にヒビの入った優里の胸の奥を更に締め付けていた。