グレーの素敵な顎髭を撫でながら、間髪入れずに恭平は説き始めた。

「まずテンポ。こう…感情がストレートに来て…安定が無いかな。音質も不安定だし。けれど一つ一つの音がよく響いてる。後は…選曲は必ずリストかショパン…とくればまぁ君しか居ないだろ」

まるで午後のミステリードラマの探偵のような言い回しに優里は少し笑ってしまった。

「先生凄いですね。浅見さんみたい」

「は、当たり前だ。先生なんだから。全くもう」


舞台役者のような独特の空気を持つ恭平だからかもしれない。

子供のようなヘの字をした恭平に、普段は素直に笑えない優里もクスクスと笑っていた。