「あ…やっぱり倉科くんか。そうだと思った。また弾いてたの?」


40代後半、落ち着いた優しい声が室内に響く。


“倉科くんか”の言い回しがあまりに確信に満ち満ちていたので、優里は少し吹き出してしまった。


「え、どうして私だと分かったんですか?」


恭平は当たり前といった表情でこう答えた。

その表情も可笑しくて優里はまた吹き出してしまう。