(えっ、降りないと!)

「ちょっ、すみません、降ります!」

人をかき分けて飛び降りる。と同時に開放感に身を預けながら時計を見た。

「ふー…って、あ!」

針は8時55分ちょうどを指していた。久々の電車通勤は、思っていた以上に時間がかかっていたようだった。

「うわ!痛っ、すみません!」

腕から目を前に移した次の瞬間には、千理は会社に向かって行く人にぶつかりながら全力疾走していた。