暫くそれが続き、兄は言った。


「ありがとう優里…。もういいよ。少し休むな」


そう言うと兄はベッドに横になった。


気力を使い果たしたのか、兄はすぐに寝息を立て始めた。


優里ら浸る間も無く、電話の所へ向かった。

そして祖母や母の友人と手当たり次第に電話をかけ、母が居ないか確かめた。



母は誰の所にも来てはいなかった。


きっと自分の車でどこかで野宿するつもりに違いない。


仕事中ではあるが、父に電話をかけてその事を伝えると優里は母の無事を願いながら少し休みにつこうとした。

…が、今朝の事を思い出す。

(そう言えば…向井さんの鍵…返さなきゃ)
鍵が無ければ家に入れない→風邪→欠勤→クビ

といった短絡的な思考に捕らわれた優里は急いで書き置きをして家を出た。