俺の左にいたその男性は、こげ茶色のセーターを着ていた。
男の俺から見ても、相当かっこいい。
絶対に香織には会わせたくないタイプの男性だ。
スラっと伸びた長身。
俺よりも高そうだ。
しかも筋肉のついた男らしい体型。
「お先にどうぞ」
彼は爽やかにそう言うと、違う棚の方へ歩き出した。
俺はよく“素敵な声ですね”と言われる。
香織にはよく甘い声だとも言われる。
でも、今の男性の声も…… 相当素敵な声だった。
「これ、何ですか?」
いきなり声をかけてきたのは、俺の右側にいた男性。
さっきから、俺のことをジロジロ見ているなと思ったら、俺を店員だと勘違いしているのか?
待てよ。
ロングコートを着た店員なんているわけがない。
「あ、空気清浄器のようなものですね」
俺は店員のように答えた。
チラっとその男性の顔を見た。
またまた驚いた。
かっこいい。