「名前も分からないくせに、おまえの心の悲しみをなんとかしてあげたい……そう思った」



涼の話を聞いてたら、視界がぼんやり涙で霞んできた。

でも、涙を零さないように、唇をキュッと閉じた。



「おまえの事、もっと知りたい……そう思った。その時、俊夫から夜におまえが海に居る話を聞いて、おまえと話がしたくて海へ行ったんだ」

涼が急に、フッと笑った。



「おまえは信じねぇーかもしんないけど……初めて話し掛ける時、メチャメチャ緊張したんだぜ?」

「えっ? そうなの?」



だって、すごく明るく自然に話してたよね?