「ああ! じゃあ、『ペアエプロンの彼女』って、噂じゃなくて本当だったんだ!」

希未の意識は、もう『沖野先生の彼女』に切り替わったようで、そう声を上げた。



「何、その『ペアエプロンの彼女』って?」

学校での噂を知らないお母さんが、そう訊いた。

それをきっかけに、希未が解説しているのを私は背中で感じながらも、まだ振り向けなかった。



「東野、ちょっと」

涼はそんな私を見るに見兼ねて、タバコの火を消してから私を外へ手招きした。



この状況で2人だけになっていいものか、一瞬迷ったけど、今の顔のままで振り向けなかったので私も外へ出た。

すると、涼はガラス戸を閉めて、中の会話が聞こえないように……ううん、私達の会話が聞かれないように、遮断した。