「美雪」

お母さんが呼んだ気がして、そっちを向こうとしたら。

「伊藤、あんまりビックリさせるような事、言うなよ? 驚いてむせただろ?」

涼が大きな声で希未に話し掛けたので、思わず涼の方を見た。



「まぁ、学校じゃ誤魔化しているけど、ここに居るみんなにだけナイショで教えるから、秘密にしておけよ? ……俺、結婚を前提に付き合っている彼女、居るからな」



ドキン



『美雪が彼女』って言われてる訳ではないのに、みんなの前で紹介された感じがして、心臓がバクバク鳴り出す。



『彼女が居るって言うと、今度はその彼女が誰なのか詮索する生徒が出てくるから、ナイショにしているんだ』って涼は言っていた。

だから、自分の生徒の前で『彼女が居る』ってハッキリ言ったのは、今が初めて。