力一杯叫んで会話するせいで、沙成は哲平の倍は体力を消耗する。今度は沙成が事務所の机につっぷす番だった。
 事務所の机といってもスチール製の物ではなく、木作りの逸品である。店員が休憩できるようにと、父親の代から入れられていて、沙成や秀宏はちょっとした休憩や昼食に良く使っていた。小さいがキッチンもついているので、お茶や簡単な料理くらいはここで十分に作れた。
 「哲平に付き合ってると疲れる」
「年寄りの台詞だよ、それ」
むっとして顔を上げた小めの頭に哲平は手を伸ばす。沙成の髪は少し栗色ががっていて軟らかく、指で梳くと気持ちが良い。嫌がるかと思ったが、沙成は素直に哲平の好きに任せていた。
 しばらくその感触を楽しんで、哲平は今度は下手におねだりを開始する。
 「なー、沙成」
「なに?」
「明後日、本当に時間ないの?」
「ない。…学生と違ってこっちは仕事があるの」
「だって、クリスマス・イブだぜーっ?! やっぱり恋人と過ごしたいじゃんか」