「他人の迷惑を考えない奴だよ、全く」
頬杖をついて、ふんと横を向いてやる。おとなしそうな外見とは裏腹な短気で口の悪い本性を知っている少年は、それくらいではめげなかった。
「仕事の邪魔したって?」
「わかってるなら邪魔するなよ、ボケ」
だん!と机を殴るが、効果ゼロ。おそらく校内校外問わずもてまくっているだろうハンサムな少年は、両手に頬を乗せて嬉しそうに沙成を見ているだけだ。
 実のところ、くるくると変わる沙成の表情を見ているのが好きなのだ。仕事をしているときは取り澄ましているくせに、素の沙成は、とても感情的で可愛い。
 「いーじゃん。フレキシブルに時間を使えるのが、自由業の良いとこなんだし」
「…事件の解決になってないぞ、おまえ」
男性的と言うよりもむしろ少女めいた印象を与える顔を顰めて、沙成は嫌そうに応じる。そんな顔も恋する哲平にはとても愛しくて。ついつい顔がにこにこと緩んでしまう。
 「するつもりないもん。…それより、沙成ちゃんかわいいなぁ」
「〈ちゃん〉付けはよせ!気持ち悪いっ!」
「かわいいのに」
「かわいかないっ」