標準を軽く10cmは上回る身長に、短く切り揃えた漆黒の髪。被写体を探して四六時中外に出ているためか、健康的に焼けた肌。印象的なのは、相手をじっと見詰める切れ長の黒い瞳だ。無邪気な子供みたいに笑うくせに、時折、獲物を狙う鷹のような鋭さを垣間見せる。この瞳に見つめられていたいと願う少女も、そして女も多い。・・・本人は預かり知らぬ事だが。外見はともかく、中身はいたってお子さまな今泉哲平だった。
「なーなー、沙成ちゃん。明後日、暇?」
「暇じゃない」
今更「退け」といって聞く相手でないことは分かっているので、若い店長も敢えて哲平に注意しようとはしなかった。買手のついた絵の代りに出す作品をあれやこれやと検討しながら、店員と話している。店長とあまり年のかわらない店員も、沙成と哲平の仲は承知していて、どちらかの肩を持つようなことはしなかった。彼も中々したたかといえよう。
「なーなー、沙成ちゃん。明後日、暇?」
「暇じゃない」
今更「退け」といって聞く相手でないことは分かっているので、若い店長も敢えて哲平に注意しようとはしなかった。買手のついた絵の代りに出す作品をあれやこれやと検討しながら、店員と話している。店長とあまり年のかわらない店員も、沙成と哲平の仲は承知していて、どちらかの肩を持つようなことはしなかった。彼も中々したたかといえよう。