「さ、もうお客も切れたようだし、今夜はそろそろ閉めよう。どうせ、クリスマスにはカップルや奥さんたちが買いに来るだろうし」
「店長、本当に休ませて貰っていいんですか?」
毎年クリスマスにはプレゼントだとか飾りとかで絵を買いに来る人が多く、ウエストもにわかな忙しさを見せるのだ。沙成もそれを知っているから、家庭向きな小さな壁掛けや、ちょっとした宗教画をたくさん仕入れる。
 正社員になる前からアルバイトに来ていた秀宏は、その忙しさを知っている。勤続年数で言えば沙成よりもずっと長いのだ。
 だが、店員が以前の半分に減ったせいで、沙成は中々秀宏に休日をやれなかった。単純に人手の問題もあるし、店長として未熟な沙成の補佐をしてもらうためでもあった。彼がいなければ、沙成は両親の後を継ぐ事はできなかっただろう。
 誰より一生懸命勤めてくれている秀宏だからこそ、その努力には報いたいのだ。
 「済みません、忙しいと分かっているのに…」
「いいっていいって。ここのところ、杉本幸の個展なんかがあって休みがとれなかったし、彼女も怒ってるんじゃない? クリスマスくらい、つきあわなきゃ愛想尽かされるよ?」