「ん、わかった!話聞いてくれてありがとね!」
「ほんとゴメンな!じゃ」
そう言ってダッシュで帰ってしまった中田くんを見て、あたしはあることに気が付いた。
「……雪だぁ…」
闇の中でしんしんと静かに舞っている。
「……雪、好きなはずなのに…」
頬にほんのり冷たく落ちてくる雪の感覚は、好きだったはずなのに。
今になっては……ただ、体も心も冷えていくだけ。
こんな雪景色を、いつか、悠と見たことがあった。
明日、積もるかな?なんて言いながら。
……それは、温かくて優しい思い出。
「悠……」
変なの。
お母さんと迷子になった子供みたいに、寂しい。恋しい。
いつもなら隣にいるはずの悠がいないだけなのに、すごく寒い。