あたしは、そう思った瞬間、悠の舌を噛んだ。
「…!…っ……」
痛さで悠の力が弱まった瞬間、あたしは悠をおもいっきり突き飛ばした。
「……サイテー……」
あたしは泣かずに悠を睨んだ。
悠に背中を向け、この場から去ろうとしたあたし。
走りながら、制服の袖で口を擦った。
「………あ……季里っ……」
悠がなんか言おうとしてたみたいだけど、そんなの……聞こえないもん。
初めてだったのに……。
初めては、好きになった人って、決めてたのに……!
「悠の……バカ……」
あたしは、誰もいない空き教室で、
ひとり、泣きながら口を擦っていた。